キックオフシンポジウム活動報告

2019年3月9日、筑波大学臨床講義室Aにて、文部科学省課題解決型高度医療人材養成プログラム「精神科多職種連携治療・ケアを担う人材養成」(以下PsySEPTA)キックオフシンポジウムを開催いたしました。

当日は、107名の方にご参加いただき、大盛況のうちに終えることできました。ありがとうございました。

以下、講演の概要です。

 

講演Ⅰ

「本事業の概要について」 

新井 哲明(筑波大学医学医療系臨床医学域精神医学 教授)

  • PsySEPTA(サイセプタ)=「Psychiatric Staff Education Program for Transdisciptinary Approach」=「個々の専門領域の垣根を超えて多職種連携することのできる精神科領域人材養成プログラム」です。障壁(SEPTA)をなくす(Psych=解決する)という意味も込めています。
  • 本コースでは、場所や時間を問わないeラーニングで、①精神疾患を分かりやすく学ぶ講義、②各職種の一日を追ったドキュメンタリー映像、③多職種連携の理解を深めるためのドラマ仕立ての映像の配信を行います。また、グループワークや現場実習を通して、即戦力となるコミュニケーション技術やノウハウを学びます。

 

「多職種連携が目指すべきものとは」 

繁田 雅弘(東京慈恵会医学大学病院精神医学講座 教授)

  • 学生に多職種合同セミナーを行うと、初年度の学生が一番スムーズに「患者側の視点に立って何ができるか」を考え、職種を超えたコミュニケーションをとることができます。これは、学年が上がり、専門性を身につけることで、「専門職側からの視点」が強くなり、「患者側の視点」が薄れてしまうことを示しています。
  • 「連携=役割分担」ではありません。「患者側の視点」から、必要とされるサービスを、医療スタッフが連携し、足りない部分を補い合いながら提供することが、多職種連携が目指すところではないでしょうか。

 

「チーム医療を考える~回復期リハビリ病棟のリハビリの臨床から~」

山川 百合子(茨城県立医療大学医科学センター 教授)

  • 精神科多職種連携治療・ケアにおいては、PsySEPTAの「T=transdisciplinary」、つまり、各々の専門性を理解し、ある部分では役割を代替、補完しあうことも可能なチームが望ましいのではないでしょうか。
  • メンバー同士が責任を押し付け合ったり、特定のひとりかふたりのメンバー頼みにしたりする治療チームは、長続きしません。チームが、「患者の利益のために、課題を解決するための集団」であることを忘れず、意識的にコミュニケーションをとり、お互いをリスペクトすることが、チーム医療を円滑に行うために重要です。

 

講演Ⅱ

「多職種連携における作業療法士の役割~急性期医療から就労支援まで~」 

齋藤 さわ子(茨城県立医療大学保健医療学部作業療法学科 学科長)

  • 多職種連携の第一歩である、「各々の専門性を理解する」ために、シンポジウムでは、作業療法とは?、作業療法士の役割とは?、をテーマに、本事業のeラーニングにも関わっていただいている齋藤先生にご講演いただきました。

作業療法の「作業」とは、「その人が、したい、する必要がある、そして、することを期待されていること」を指し、作業療法は、“作業”を通して健康と安寧を促進することを目指しています。“作業”は人生のあらゆる局面と切っても切り離せない関係であるため、入院生活においても、急性期から慢性期、終末期に至るまで関わる必要性があります。

 

「多職種連携におけるコミュニケーションスキルについて」 

桑原 香苗(一般社団法人日本プロセスワークセンター 教員)

  • 多職種連携を、息切れせず円滑に進めるために、コミュニケーションスキルは必須です。シンポジウムでは、本事業のグループワークにも関わっていただいている桑原先生にご講演いただきました。

多職種が関わるということは、多様な視点があるということです。一人では思いもつかない解決策を得られる可能性を秘めている反面、合意が得られにくいデメリットもあります。メリットを最大限に活かすためには、短く効果的なミーティングをすること、自分の視点を相手にわかるように伝えること、相手の視点を体感することが必要です。これらは、スキルとして習得可能です!

特別講演

「精神科のチーム医療を支える要因について」 

山本 賢司(東海大学医学部専門診療系精神科学 教授)

  •  「精神科領域のチーム医療実践マニュアル」の著者であり、この分野における日本の第一人者である、山本 賢司先生に貴重なお話を伺いました。

精神科における多職種連携では、リーダーシップ、チームワーク、コミュニケーションが必要です。これらを支えるために、スタッフケア(とくに、多職種連携による横のつながりによるケア)、教育と研究(多職種連携に関わるメンバーに対する初期教育や、スキルアップのための講習会参加など)、カンファレンスやミーティング(情報共有や心理的サポートのための定期カンファレンスと、危機介入的な要素を含む臨時カンファレンスの使い分け)が重要です。

 

ご挨拶をいただいた、文部科学省高等教育局医学教育課医学教育係 主任の中山 進司様、筑波大学理事・副学長 附属病院長の原 晃先生、筑波大学医学医療系長 本事業評価副委員長の加藤 光保先生からも、激励のお言葉を賜りました。

それぞれの専門職を戦隊シリーズのメンバーになぞらえ、多職種連携することで戦隊ロボとなる、と例えてくださった加藤先生の仰るように、PsySEPTAは、各専門職が連携することで、単なる足し算ではない戦力を生み出す力を発揮することが可能となるプログラム内容となっています。ぜひご応募ください!