当科で発表した論文がTomography誌の表紙になりました

CZT(Cadmium Zinc Telluride:テルル化亜鉛カドミウム)SPECTは、従来のシンチレーション検出器に代わって半導体検出器を使用した次世代のSPECT装置です。従来のSPECTでは、ヨウ化ナトリウム結晶を使用してガンマ線を光に変換し、それを電気信号に変換する二段階の変換プロセスを経るため、検出効率が比較的低く、空間分解能にも限界がありました。一方、CZT SPECTは半導体材料であるCZTを使用してガンマ線を直接電気信号に変換するため、高い検出効率と優れた空間分解能・エネルギー分解能を実現し、より少ない放射線量での撮影も可能となっています。
 アルツハイマー病の診断において、脳血流SPECTは重要な役割を果たしています。この疾患では後部帯状回、楔前部、頭頂側頭葉皮質などの特徴的な血流低下パターンが認められるためSPECTによってこれらの微細な変化を検出することで診断に役立てることができます。CZT SPECTの高画質化により、これらの変化がより明瞭に描出されることが期待されていました。
 しかし、本研究では興味深いパラドックスが明らかになりました。神経変性疾患が疑われる29名の患者において、従来のSPECT(eCAM)とCZT SPECTを比較した結果、CZT SPECTは灰白質/白質コントラストにおいて有意に高い値を示したものの、アルツハイマー病の診断精度は改善しませんでした。参加した臨床医は両者ともに、CZT画像において感度または特異度の低下を経験しています。これらの知見は、画像の鮮明度向上が自動的に診断性能の向上をもたらすわけではないことを示しており、神経変性疾患診断において先進的な画像技術を十分に活用するためには専門的な訓練が必要であることを浮き彫りにしています。
 
この内容を根本清貴先生を中心にまとめ、論文で発表したところ、Tomography誌の表紙に採用されました。興味ある方は下のリンクからぜひお読みください。
Nemoto, K., Mathis, B. J., Iwasaka, A., Nakayama, K., Kaneta, T., & Arai, T. (2025). The Image Clarity Paradox: Higher CZT SPECT Contrast Does Not Always Translate to Diagnostic Accuracy for Alzheimer’s Disease. Tomography11(6), 61. https://doi.org/10.3390/tomography11060061