プログラムの目的と特徴




精神医学の領域では2つの重要な資格があります。

まず精神保健指定医、そして専門医です。前者は国家資格であり、患者さんの人権など関連法規を理解した上で診療できる能力があると認めるというものです。後者は精神神経学会が、一定以上の知識と技術を有することを認定するものです。

わが国の精神科臨床のスタンダードであるこれら2つを確実に取得してもらいたいと思います。次の事柄を基本に、きちんとステップを踏んでゆけば必ずや可能です。

I 研修の場

大学の精神科、精神科救急ができる病院、精神科病院の3つが骨格です。

スタートは、大学の精神科もしくは総合病院精神科における初期トレーニングです。精神科臨床の基本作法を学ぶ場とお考え下さい。

以下は個人ごとに順番は前後しますが、それぞれに固有の意味があります。

精神科救急ができる場:
ここでの臨床には多くの精神神経疾患の救急に関わる知識や技術はもとより、関連法規の運用や簡易鑑定を経験できる様々な機会があります。

精神科病院:
精神科の基本疾患は統合失調症とうつ病などの気分障害です。急性期の診断と治療に始まりますが、社会復帰に向けての支援という観点がポイントになります。

Ⅱ 精神科の専門的技術とその習得方法

まず幅広く精神神経疾患について知識を得ることが基本です。その上で求められる技術は次のように分類することも可能です。
1) 精神科面接と症候からの診断
2) 脳画像などの補助検査
3) 精神療法
4) 薬物療法
5) 経頭蓋的磁気刺激法、電気けいれん療法などの身体療法
6) 精神科関連法規・その他
これらを習得していただくために様々な工夫をしています。

まず基本中の基本を抑えるための後期研修用教材として、スタッフが協同でスライドライブラリーを作成しました。早い時期にこれを一通り解説します。

補助検査では、CTやMRIはもちろん、 SPECTなど脳機能画像についても放射線科と技術的・組織的に連携をしています。複数の神経放射線科で学んだ精神科医が読影法をお教えします。

精神療法では、精神神経学会が求める基本的なところは勿論、認知行動療法や強迫神経症などへの暴露反応妨害法については学内の心理学の専門家とも共同して研鑽を積んでいます。

薬物については、日々の指導体制や回診を基本に、年間10回以上は開催される学外有名講師による講演会などの機会に最新の知識を習得する機会を持っています。

なお講演会のテーマは精神療法や関連法にも及んでいます。今や国内のトップレベルと評される経頭蓋的磁気刺激や電気けいれん療法などは、日々スタッフが手ほどきします。

Ⅲ 経験できる疾患

精神科領域の諸疾患は一通り満遍なく経験できます。
近年精神科では経験し難いと問題になっているてんかん性疾患、小児精神疾患についても高い専門性を有する医師がお教えします。

また認知症性疾患と拒食症など食行動異常の臨床にはとくに力を入れています。

IV 診療科目の体制および研究

高い総合的な臨床能力を獲得することを最大の目的にしています。精神科の諸疾患いずれに対しても標準的な対応ができることが基本目標です。換言すれば、総合病院精神科、精神科病院、メンタルクリニックなど何処に行っても高く評価される精神科医を育てることです。それを実現するための工夫が上記のプログラムに盛り込まれています。またこれを補完するために、国立の精神神経センターや国際医療センターなどとも活発な人事交流をしています。
こうした基本の延長線上に研究を捉えています。出発点となるのが臨床研究であり、それらを深めるのが基礎的研究です。私たちのグループには、次のような研究グループがあります。予防・疫学的研究、プロテオミクス研究、分子遺伝学研究、薬理学的研究、病理学研究、脳機能画像研究。また学際的も特徴です。医学関係の別組織である遺伝子研究グループ、社会医学グループ、小児科などと合同勉強会、あるいは心理学や体育学群との共同研究を続けています。さらに研究学園都市のメリットを活かして、他の研究機関との共同研究や連携も日常的に行われています。これらの研究をさらに深めたい場合、国内外の有名施設で研鑽を積むことは今後の担う若い先生方には不可欠と考え、その後押しにも努めています。